動悸・・・<症例考察>


血液を全身に送るために心臓は休みなく拍動しています。その回数は比較的安静にしていても一日約10万回も収縮と拡張を繰り返しています。運動をして筋肉にたくさん酸素を供給しなければならないとき、交感神経が優位になって心臓の拍動を上げてたくさんの血液を送り出す・・・すなわち心臓がドキドキするのは誰にでも経験があると思います。普段は心臓の拍動など意識することもないのですが、こういった運動で身体を激しく動かしたときなどは心臓の存在を感じるものです。でもこの場合に心臓の存在を感じるのは当然のことなので通常は別に違和感を全く持ちません。
しかし、もしも安静にしているのに心臓がドキドキしたりしたらどうでしょう。合理的な理由がないのに心臓の存在を感じる・・・それはかなり違和感を伴うもので、それが通常『動悸』と言われているものです。

言い替えれば動悸とは心臓の拍動を違和感を伴って自覚するものと言えそうです。そしてその「違和感」は安静時など特に交感神経が優位になっていないときに、頻脈になったり、脈が乱れたり、心臓の収縮力が強くなったり、規則正しいはずの脈が飛んだりという、通常の律動状態との違いを感じることからくると思います。そういった心臓の拍動リズムが乱れた状態を不整脈といい、それを感じたとき人は『動悸』がしたと言います。

動悸には心臓や呼吸器などの重篤な障害が原因のもの、緊張や興奮、不安などの精神的なことが原因のもの、ホルモンバランスの乱れが原因のものなどがあります。もちろん心臓や呼吸器などの重篤な障害が疑われる場合は専門医に診てもらうことが必要です。しかしながらそういった重篤な障害がないにも関わらず不快な『動悸』を感じる場合は、いわゆる自律神経失調症の一つの症状と思われ、したがって交感神経と副交感神経のバランスが乱れていることに主な原因があると考えられます。

自律神経系の制御をしているのは間脳にある「視床下部」というわずか5gくらいの小さな脳です。
視床下部という小さな脳の中では自律神経系の中枢として、交感神経と副交換神経の制御や体温調整を行っています。そして同時にホルモン系の中枢としてあらゆるホルモンの監視や分泌の指令を司っています。視床下部は生命維持にとってなくてはならない相当に優秀な脳です。しかしながらいくら優秀な脳であっても機能には限界があります。例えば生理などでホルモン系の仕事が多くなった分、自律神経系の仕事にしわ寄せがいってしまう・・・また気温の変化が激しいと体温調整に忙しく、自律神経系やホルモン系の仕事にしわ寄せがいってしまう・・・その結果「動悸」を発症してしまうとも考えられます。

また視床下部は「大脳辺縁系」という喜怒哀楽を受け持っている脳に包まれた形ですので、いろいろなストレスの影響を受けやすくなっています。「強い心配事」や「凄く嫌なこと」が起こったりしたとき、ただでさえ忙しい視床下部は外側から攻められてしまってさらに窮屈になって十分に機能できなくなってしまうのではないでしょうか。

ですから『動悸』が起こるということは、視床下部の自律神経に乱れが出たということなのですが、それが何らかの加減で体温調整機能の乱れに出た場合は『ホットフラッシュ』や『冷え性』を、ホルモン系に影響してバランスが崩れた場合は『更年期障害』や『生理前緊張症』など、或いはひどい時はそれら全てを発症してしまうこともあると思います。なぜならそれら全てをコントロールしている「視床下部」が窮屈で仕事が十分にできないからだと私は考えます。

動悸の緩和と回復にはホットフラッシュや更年期障害と同じように、視床下部にゆったりと仕事をできるようになってもらうことが必要です。そのためには脳への血液供給を回復させることが第一義だと私は思います。そして脳への血流改善のためには頸椎(特に上部頸椎)の施術も行いながら、「中立位の整体」や「頭蓋仙骨療法」で身体の深奥部である硬膜管をも含めた脳脊髄液の循環改善を行うことで「心」と「身体」両方から深いレベルのリラックスを得る・・・視床下部を含む脳への血液供給が改善される・・・視床下部が本来の仕事ができるようになる・・・自律神経のバランスがとれる・・・ホルモンバランスも回復する・・・その結果、動悸をはじめ不快な症状はなくなっていくのではないでしょうか。



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